自転車のスポークが折れる原因と対策

自転車の車輪についている針金のような線(スポーク)が折れたり、切れたり。 なぜ自転車のスポークが折れてしまうのか? なぜ修理代が高いのか? なぜ修理にそんなに時間がかかるのか? と言うような疑問や対策についてお答えします!!

 

目次

 

部品の名前

まずは部品の名前を覚えて下さい。車輪の真ん中についているハブに引っかかっている棒の方がスポークで、リム側のナットがニップルです。

スポークとニップル

スポークの頭の部分で折れたり、ニップルの手前で折れたり、ニップルの頭が飛んでしまう感じをスポークが折れたと言います。

スポークの折れる場所

 

スポークの役割とスポークが折れる理由その1

スポークは車輪が上下左右にゆらゆらしてしまわないようにバランスをとる事。振動を吸収する事。車輪の強度を保つ事。と言う重要な役割を背負っています。

また、当然ですが、唯一ホイールを繋がっている所はフレームのエンド部分だけになりますから、画像左側の矢印部分にライダーの体重が全て乗っている事になります。

体重のかかりかた

想像しやすくする為にスポークの数を少なくして大げさに表現していますが、車輪の中心に重さが加わると、上側のスポークは下に引っ張られ、下側のスポークは弛みます。

スポークへの負荷

ただ人が乗って、車輪が回っているだけで、赤いラインが引いてある付近にスポークが来ると引っ張られ、下の方に来ると弛むと言う事が永遠に繰り返されます。針金もクネクネしていると、そのうち「ポキ」っと折れますよね。これが劣化によるスポーク折れです。

また、段差などの衝撃が加わると、引っ張られている上側のスポークが耐えられる限界を通り越して折れてしまいます。かかる衝撃が大きければ大きいほどスポークが折れやすくなりますから、体重の重たい方や、子供乗せの自転車・電動自転車などの自転車本体の重量が重たいものほどスポークは折れやすくなるのは当然の事です。

スポークにかかる衝撃

もちろん、空気の入れ過ぎだって良くありません。チューブの中の空気がサスペンションの代わりになって衝撃を緩和してくれれば、車輪の負担も少なくなるのに、空気を入れ過ぎていると衝撃を吸収できずにスポークが切れてしまいますから、ロードバイク等の高圧を入れるタイヤを履いている自転車は、段差を乗り越えないのが基本。段差を乗り越える必要がある時は、サドルから腰を浮かして抜重するなど、乗り方に工夫が必要です。

 

スポークが折れる理由その2

スポークはペダルを漕ぐ力が強すぎて折れてしまう場合もあります。

ペダルを漕ぐと上側のチェーンが自転車前方に引っ張られる事で、チェーンが引っかかっているスプロケット(後輪中央にあるギザギザの歯)が回転し、車輪が回るのですが、その時スポークは少し大げさですが、右側の画像のようにねじれます。これがペダルを漕いでいる間ずっと繰り返されますから、累積の走行距離が長くなればなるほどスポークは劣化して折れやすくなってしまいます。

また、体重やパワーをかけてチェーンを強く引っ張れば引っ張るほどスポークは折れやすくなりますから、負荷がかからないように徐々にギヤを重たくしてゆく走り方が重要になります。

シティーサイクルでサドルをメチャクチャ高く設定し、立ち漕ぎに近いような状態にすると、凄く良く進み、速く走れるのですが、そんなセッティングで乗車している方は、ほぼ間違いなくそれがスポーク折れの原因です。

スポークのねじれ

また、自転車のチェーンはかなりパワーをロスしますから、まだスポークにかかる負担はそれほど多くないのですが、シャフトドライブの自転車はダイレクトにパワーが伝わりますから、チェーンの自転車より断然スポークは折れやすくなります。シャフトドライブは進みが良く、注油が不要で、雨ざらしでも錆びませんし、チェーンが切れるとか、チェーンが緩むとか、チェーンが外れると言う心配が要らない所がメリットですが、ダイレクトにパワーが伝わり過ぎる為に頻繁にスポークが折れるのがデメリットですから、シャフトドライブの自転車で後輪のスポークが頻繁に折れる方は、より一層負荷をかけないようなペダリングと、ギヤを上手に使う事が必要です。

シャフトドライブによるスポークのねじれ

 

電動自転車の後スポークは良く折れる

上の段で、ペダルを漕いだパワーが後輪に伝わり過ぎるとスポークが折れると言う話をしましたが、電動自転車は人間がペダルを踏む以上のパワーを出してくれます。普通は立ち漕ぎしなければ登れない坂もサドルに座ったままでスイスイ走ってくれます。そうです。乗っている人は立ち漕ぎをしていませんが、チェーンは立ち漕ぎをしている以上の力でモーターが引っ張っているのです。だから楽に走れるのですが、スポークには想像を絶する負担がかかっています。

電動自転車のスポークのねじれ

たち漕ぎで自転車を漕いでいると、「かなり頑張っている」=「自転車に負担がかかっていそう」と誰もが思うのですが、電動自転車の悪い所は乗車している本人に自転車を酷使している自覚が全くありません。しかも、走りを軽くする為に空気はパンパンにいれ、カゴにはどっさりお買い物をいれたり、前後に子供を乗せたりと、総重量は半端ない事になります。

電動自転車には厚いクッションのサドルが付き、サドルの下には衝撃を吸収してくれるバネやゴムのサスペンション機能が付いていますから、乗車している本人にそれほど大きな衝撃は来ないのですが、実はその下で段差を乗り越える時にもの凄い衝撃を受けているのです。

そんな状態でスポークが折れないはずありませんから、電動自転車でよく後ろのスポークが折れる方は、アシストを弱くする。タイヤの空気圧は適正値にする。出だしは軽いギヤでスタートし、スピードがあがるに連れてギヤを重たくして行く。段差はスピードを限界まで落とし、トン、トン。と言う感じでそっと越える。と言う乗り方をしてみて下さい。

 

スポーク交換の値段が高い理由

前車輪は、傘や木の枝などを巻き込んだり、ホイールがポテトチップスのように曲がってしまうような衝突をしなければ、スポークが折れる事は滅多にありませんし、スポークが折れても交換は簡単なのでそれほど高額にもなりません。

問題は後輪です。

ギヤなし(シングルスピード)の自転車に多く使用されているハブ(車輪中心の軸)は、スポークの頭をハブのフランジに通して、引っ掛けて固定するタイプですから、交換する時にも折れたスポークを取り外し、ハブのフランジに新しいスポークの頭を通し、細くなっている部分に引っ掛けてニップルを回せば取り付けが完了しますので数分で修理が完了し、修理金額も高額にはなりません。

こちらの良い所は、車輪をバラバラから組み立てるのがとっても簡単な事と、スポークが折れても簡単に修理が終わる所。悪い所はスポークが緩んだ状態のまま走っていると、フランジに引っかかっているスポークの頭が外れて車輪がバラバラになってしまう事です。

スポークの取り付け部分

しかし、ギヤ付き(多段変速)の自転車に多く使用されているハブ(車輪中心の軸)は、ハブフランジにスポークのネジ山部分からスポークを通してニップルと繋げるのですが、右側のフリーギヤやスプロケット(チェーンが引っかかる右側のギザギザ)と呼ばれる部品にスポークがぶつかって通せない事。ママチャリの場合は左側のブレーキがある為にスポークを通す事が出来ませんから、ホイールをフレームから外して、ブレーキやスプロケットを外さなければスポーク交換ができません。

しかも、前に記述した理由から、殆どスポークが折れるのは後車輪なのです。(涙)

材料は針金のような棒をたった1本交換するだけで、作業の痕跡も36本くらいある細い棒の中の1本がピカピカになっているだけですから、やって貰った感は全然無いのですが、とても手間のかかる作業ですから、当然修理代も高くなってしまうのです。

 

なぜスポーク交換は時間がかかるのか?

後輪のスポーク交換作業は作業が大変ですから、一般的な修理よりも時間はかかるのですが、作業開始から数時間も必要な訳ではありません。

しかし、スポークの長さは車輪のサイズが同じであれば共通で使えるような物ではなく、リム、ハブ、スポークの編み方、スポークの本数の組み合わせで長さが変わり、車輪の右側と左側でも長さが違います。太さも3種類あります。

スポークの長さは、・リムの内径 ・リムの厚み ・スポーク穴のずれ ・ハブフランジのの右側オフセット ・左側オフセット ・フランジ幅 ・オーバーロックナット寸法 ・右側フランジのPCD ・左側フランジのPCD ・スポーク本数 ・スポークの太さ ・スポーククロス数 ・スポークを編むか編まないか ・スポークを編む数。で求める事が出来ますが、ハブ、リムが完全にバラバラ状態でないと正確に長さを出す事が出来ませんから、修理の場合は折れていないスポークを1本外して計測するのが一般的で、その間は自転車に乗れません。

全ての太さのスポークを1mm刻みで在庫をしているお店や、スポークを作る機械を持っているお店以外は、外したスポークと同じ長さの物を発注し、入荷後の修理と言う形になりますし、技術者がいないお店はメーカーの営業マンが来るのを待つ事になりますから、数十分~数週間と言うばらつきがお店によって出てしまいます。

高額スポーツ車のホイールは、特殊な形状の専用スポークが使われている事が多く、お店はホイールのブランド毎に契約をしなければ部品も入手できないと言う事が多いですから、ホイールを購入したお店以外で修理するのは難しいと思って頂いた方が良いと思います。

 

スポークが折れた場合の応急処置

スポークが折れてしまった場合の応急処置ですが、スポークの頭が飛んでしまっている場合、反時計回りに回せばニップルから抜けるのですが、リムの形状によっては二次被害が起こる可能性もありますから、折れたスポークが暴れて他の部分を壊してしまわないようにする為に、付近のスポークにテープなどで固定してください。

スポークが折れてしまった場合の応急処置

 

スポークを折れにくくする対策

空気圧、乗り方、ペダルの漕ぎ方、ギヤの使い方、荷物を減らすなどはお金をかけずに出来ますから、まずその中で出来る事を行って頂きたいのですが、ホイールを交換するタイミングなどで、物理的にスポークの折れにくいホイールを作りたいのであれば、下のような方法があります。

(1)スポークの数を増やす(画像中央)。(2)スポークの交差箇所を増やす(画像右)。

スポークを折れにくくする対策

(3)スポークの太い物を使用する (4)スポークがステンレス製なら鉄製にする

スポークを丈夫にする

① スポークの太さは太ければ太いほど強くなります。② 鉄製のスポークの悪い所は錆びてしまう所で、③ステンレス製のスポークはいつまでも錆びないのですが、④ ステンレスのスポークは硬いので必要以上の力が加わると鉄よりも折れやすく、⑤ 鉄製スポークの方が必要以上の引っ張りに対しても切れにくいです。