BD-1,Pacific18,Frettaのハンドルステム交換方法

ハンドルまでの距離が遠い。ハンドルが近すぎる。ハンドルを高くしたい。ハンドステムが割れてしまったなど、ハンドルステムを交換したい理由はさまざまですが、 BD-1、Bianchi Fretta、Peugeot Pacific18のハンドルステムを交換する方法や、交換に必要な部品の選び方、工具等を詳しく解説します!!

 

目次

 

はじめに

ハンドルまでの距離が遠い。ハンドルが近すぎる。前傾姿勢にならないようにハンドルを高くしたい。ハンドステムが割れてしまったなど、ハンドルステムを交換したい理由はさまざまですが、 BD-1、Bianchi Fretta、Peugeot Pacific18のハンドルステムを交換する方法や、交換に必要な部品の選び方、工具等を詳しく解説してゆきます。

ライディングポジションを変更する為のステム交換なら良いのですが、BD-1やプジョーのPacific18が発売されてから四半世紀が経過し、経年劣化でハンドルステムにひび割れ(クラック)が生じている物も多く見かけます。

ハンドルを1点で固定しているタイプは乗車した時にひび割れが見えるのですが、ハンドルを2点で固定しているタイプの物は裏側にヒビが入るのが殆どです。 乗車時に突然ハンドルが無くなってしまうと大きな事故につながりますから、まだハンドルを4つのボルトで固定するタイプへ交換されていない方は、乗車前、乗車後には必ず黄色の矢印部分(溶接ビードの脇)を確認するようにして下さい。

目視ではとても解り難いですから、矢印の部分を爪で引っかくようにしたり、虫眼鏡やスマホの拡大鏡を使用して確認するのがお勧めです。

BD-1のハンドルステムのひび割れ確認

 

 

ハンドルステムを選ぼう

まずは一番肝心なハンドルステムの選択ですね。選べる種類は下記の3種類です

BD-1用ハンドルステム

BD-1 Nonadjust Stem 19.2D

角度:19.2度 / 長さ:ヒンジからハンドルまで250mm
※BD-1のモデルにもよりますが、一般的なBD-1はステムの長さが270~280mmですから、標準の物よりも若干ハンドルは低くなります。
※ブレーキやギヤのケーブルはそのまま使用できます


BD-1 Adjust Stem 10D

角度:10度 / 長さ:ヒンジからハンドルまで300mm~390mmを5段階で調節可能
※BD-1のモデルにもよりますが、一般的なBD-1はステムの長さが270~280mmですから、標準の物よりも若干ハンドルは高い位置になります
※一番低い300mmの位置で使用する場合は問題ありませんが、ハンドル位置を高くするとブレーキやシフトケーブルの長さが足りなくなりますのでワイヤー3本を交換する必要があります。


BD-1 Adjust Stem 21D

角度:21度 / 長さ:ヒンジからハンドルまで300mm~390mmを5段階で調節可能
※BD-1のモデルにもよりますが、一般的なBD-1はステムの長さが270~280mmですから、標準の物よりも若干ハンドルは高い位置になります
※一番低い300mmの位置で使用する場合は問題ありませんが、ハンドル位置を高くするとブレーキやシフトケーブルの長さが足りなくなりますのでワイヤー3本を交換する必要があります。

補足

ハンドルステム上側の形状が同じ為、Birdyの物を流用できそうにも思いますが、コラムの長さがBirdyとは異なりますからBirdyのハンドルステムを流用する事は出来ません。

Birdy用ハンドルステムとBD-1用ハンドルステムが違う理由

そもそも BD-1 は Birdy よりもヘッドチューブ(赤矢印)が長いです。 そして、Birdyはベアリングがヘッドチューブに内蔵されているインテグラルタイプなのに対して、 BD-1はヘッドチューブの上下にヘッドパーツが取付されますから、さらにコラムは長くする必要があります。
したがって、Birdy用ハンドルステムのコラム(黄色部分)はBD-1よりも短い為、 Birdy用のハンドルステムをBD-1に流用する事はできません。

Birdy用ハンドルステムとBD-1用ハンドルステムのコラムの長さ

ちなみにBirdyやBD-1のコラムの長さは以下の通りです。

  • Birdy Disc -------- 131mm
  • Birdy CLASSIC -------- 143mm
  • Birdy Air -------- 131mm
  • BD-1 2005年~ -------- 147.5mm
  • BD-1 ~2004年 -------- 147~148.5mm

 

ハンドルをどうするか考えよう

新しいハンドルステムはハンドルのクランプ径が最近では一番ポピュラーな 31.8mm と言うサイズですが、 BD-1に標準で取り付けされているハンドルは一昔前のフラットハンドル規格で 25.4mm と言うサイズです。

心機一転ハンドルも交換してしまおう!! という場合は 「 BD-1 Over Size Handle 」をチョイスすれば、見た目もスマートでハンドルの剛性もあがりますから、 気分も上がると思います。

BD-1のハンドル径

できるだけ予算を掛けずに現在取り付けされているハンドルを流用したい場合は 「 BD-1 Stem Sim 」 と言う、ハンドルとハンドルステムの隙間を埋めるシムを使いましょう

BD-1のステム用シム

 

現在装着のBD-1ハンドルステムのタイプを確認しよう

年式(ステムのタイプ)によって、交換に必要な部品に追加が出ますから、現在BD-1に取付されているハンドルステムがどちらのタイプになるかを確認して下さい

※便宜上年式で分けていますが、年式は大雑把ですから、形状を優先して下さい

BD-1のハンドルステムのタイプ

~2004年はヘッドパーツとヒンジレバーの間に玉押しを保持する為の6角レンチを差し込めるボルト付の玉押しクランプが付いており、 2005年~にはその部品がありません。

 

● 2005年~モデルの場合

この項は無視して、先へ進んでください。

● ~2004年モデルの場合

~2004年は、それ以降のモデルに比べて若干ヘッドパーツのスタックハイト(要するに長さです)が違います。

ギリギリ問題なく取り付けできる場合もあるのですが、ヘッドキャップボルトを締め切れず、ヘッドのガタツキを押さえられない事がありますから、 念のため 「 BD-1 Headset Spacer 2mm 」 も用意して下さい。

BD-1のハンドルステムのタイプ

 

ハンドルステム交換に必要な工具

BD-1のハンドルステム交換に必要な工具

BD-1のハンドルステムを交換する為に必要な工具は以下の通りです。

  • 4mmの六角レンチ
  • 5mmの六角レンチ
  • 6mmの六角レンチ
  • マイナスの精密ドライバー
  • 鉄、アルミ、ステンレスなどの板(縦:40mm以上、横:15mm以上、 厚み:2~3mm)

※ グリップシフトの場合は3mmの六角レンチも必要です

 

部品の取り外し

ハンドルまわりの分解

ひとまず、ハンドルに付いているアクセサリーなど全て外します。

5mmの六角レンチでブレーキレバーを緩め、グリップとブレーキレバーを取り外し、ステム上部のボルトを6mmの六角レンチで緩めてハンドルをステムから引き抜いてください。

ハンドルまわりの部品を取り外す

 

フロントフォークの取り外し

次に4mmの六角レンチで「 Front Spring Stopper Upper」を取り外してから、 5mmの六角レンチでフォークの側面にある2本のボルト 「Fork Bolt」を取り外し、 「Front Spring Lock Lever」「Suspension Lock Spring」を外します。

グリップとブレーキレバーとハンドルを取り外す

 

そして、5mmの六角レンチでハンドルステムの一番底に付いている「ヘッドキャップ」とそのボルトを外します。

BD-1を地面に寝かせる

 

この後にフロントフォークを引き抜くのですが、ヘッドパーツがバラバラになって細かい部品を無くしてしまう事がありますから、BD-1を地面に寝かせましょう。

BD-1を地面に寝かせる

 

そして、ゆっくり慎重にハンドルステムを左右に捩じりながらフロントフォークを引き抜きます。

ハンドルステムからフロントフォークを引き抜きます

 

フロントフォークは外れましたが、フレームにはまだハンドルステムが刺さった状態になっています。

 

ヘッドパーツの分解

ここからヘッドパーツを分解してゆきます

2005~の場合は・ヘッドスペーサー ・アルミ防水カバー ・樹脂防水シール を手で外します。

~2004 の場合は・ヘッドスペーサー ・ゴム防水カバー を手で外します。
ゴム防水カバーは少しきついですが、捩じりながら外します。

ヘッドスペーサー、アルミ防水カバー、樹脂防水シールを外します

まれにこのままハンドルステムをフレームから引き抜ける事もあるのですが、 殆どの場合はテーバーカラーが玉押しに食い込んでいてハンドルステムを抜く事ができませんから、テーパーカラーと玉押しの隙間に精密マイナスドライバーを差し込んで テーパーカラーを傷つけないように注意しながら下にこじりながら引きずり出してください。

テーパーカラーを精密ドライバーで引きずり出す

 

テーパーカラーを外すと、急にハンドルステムがガクガクになりますから、そのままフレームからハンドルステムを引き抜いてヘッドの小物を全て取り外します。最終的にこのようなバラバラの部品になれば、分解は終了です。

BD-1のステムやヘッドを全て分解した状態

 

補足

ハンドステムに付いている「玉押しクランプ」と「玉押し」は再利用しませんのでハンドルステムから取り外す必要はありませんが、「防水樹脂カバー」は必ず取り外してください。

ガッチリはまっている訳ではありませんから、手で触れば直ぐにわかるのですが、目で見ただけでは「玉押し」と「防水樹脂カバー」が一体の部品のように見えてしまいます。 私も外すのを忘れてヘッドの組直しをする羽目になる事が時々ありますから、皆さん気を付けて下さいね。

防水樹脂カバーの外し忘れに注意

 

部品の組み付け

ヘッドパーツ組付け時の注意

まずヘッドパーツを組み付ける前にベアリングの向きを注意してください。

恐らくヘッドの小物は組み付ける時の事を考えて外した順番に並べて置いてある事と思いますが、 取り外したベアリングをパーツクリーナーで洗浄し、グリスを塗りなおしていたりする間にベアリングの向きが分からなくなってしまったと言う問い合わせがとっても多いです。

ベアリング自体は上下とも同じ物ですから、上に付いていたベアリングを下に持ってきても全く問題ありませんが、組付ける時の向きだけは十分注意して下さい。

ベアリングの向きに注意する事

 

ヘッドパーツの組み付け

ヘッドパーツの組み付けと、新しいBD-1用ハンドルステムの取り付けは一気に行います。

ヘッドパーツ一番上の「樹脂防水カバー」から一番下の「アルミカラー」までをフレームに順番通り取り付けて、ハンドルステムを上から差し込みます。

BD-1ヘッドパーツの組み付け

 

ヘッド小物を取り付けて、ハンドルステムを差し込むとこのような状態になっていると思います。

BD-1ステム差し込み後

 

フロントフォークの組み付け

フレームの下側から飛び出たハンドルステムのコラムに、フロントフォークを差し込めば済むように思えるのですが、そうは問屋が卸しません。

分かり易くする為にありえないほどの大げさな絵を書きますが、昔のハンドルステムのコラム外径はフロントフォークの内径よりも細く、 固定力も甘くなりますし、フォークにかかる負担も多かった為、新しいステムは外径が少しだけ太くなっています。

ハンドルステムのコラム

 

当然、精度を上げれば値段もあがりますから、現在販売されているBirdyの値段が高いのは至極当然ですね。 ぱっと見は BD-1と言う名前で販売されていた時にそっくりですから、その頃を知っているユーザーさんは今の値段にビックリされるのですが、 一番最初のモデルから四半世紀ずっと触り続けている私たちは、どんどん性能や精度が値段を上回っていってるから安い!!と感じてしまう所のギャップがまた面白いですね。

スミマセン。脱線しました。

そのようなわけで、新しいステムにはスルッと滑るようにフロントフォークを差し込む事ができません。

そこで、あらかじめ用意しておいて頂いた
「鉄、アルミ、ステンレスなどの板(縦:40mm以上、横:15mm以上、 厚み:2~3mm)」
の登場です。

これから差し込むハンドステムにこの板が接触しないように、円から少しずらしてフォークの隙間に差し込み、分解の時に取り外したフォークボルト2本を自転車の左側からねじ込んで行きます。

この部分も分かり易くする為にありえないほどの大げさに絵を書いていますが、 2本のフォークボルトを指で締めてゆき、板が動かない状態にできてから5mmの六角レンチで締め込むのですが、六角レンチを1/4~1/2回転もすれば十分スルッとフロントフォークを差し込めると思います。

板を挟んでフォークの穴を広げる

 

フォークが取付できたらフォークの左側に差し込んだフォークボルト2本と板を外します。

フォークボルト2本と板を外します

 

ヘッドキャップとボルトをフォークの下側から差し込み、5mmの六角レンチで締め込んで行きます。

※この時、5mmの六角レンチは必ず長い方を差し込んで下さい。そして、レンチの短い方を親指と人差し指で摘まみ、指の力だけで締め付けます。

ヘッドキャップとボルトをフォークの下側から固定する

 

フロントフォークの玉当たり調整

ヘッドキャップの取り付けが終わりましたら、ヘッド部分の玉当たり調整を行います。

まずハンドルステムとフォークを持って、同じ方向へ回すようにしてベアリングがゴリゴリする感じが無いか?とスムーズに回るかを確認します。

動きが硬い場合やベアリングがゴリゴリしている感触がある場合は、ヘッドキャプのボルトを締め過ぎですから、5mmの六角レンチで少し緩めて下さい。

それでもゴリゴリしている感じが全くなくならない場合は、ベアリングの向きを間違えている可能性が高いですからヘッド部分をもう一度分解して、ベアリングの向きを確認して下さい。

ベアリングがゴリゴリしないかを確認する

 

ヘッドの動きに問題が無く、ベアリングがゴリゴリする感じが無ければ同じようにハンドルステムとフォークを手で持って、前後に振ってみた時にヘッド部分にガタツキが無いかを確認して下さい。

ヘッドのガタツキを確認する

 

ヘッドキャプのボルトを強く締めても、ガタツキが無くならない場合はハンドルステムの底面とヘッドキャプのクリアランス不足が考えられますので、 「 BD-1 Headset Spacer 2mm 」をフォークとヘッドパーツの間に差し込みます。

ガタツキが止まらない場合はBD-1 Headset Spacer 2mmを追加する

 

スプリングロックレバーとロックスプリングの組み付け

画像のように「 Front Spring Lock Lever (フロントスプリングロックレバー)」「Suspension Lock Spring (サスペンションロックスプリング)」を重ねてフォークの隙間に差し込み、 フォークボルト2本を自転車の右側から取り付けます。

※まだ仮り組みの状態ですから、フォークボルトは軽くしまっていれば結構です

BD-1スプリングロックレバーとロックスプリングの取付

 

フロントスプリングストッパーアッパーの組み付け

そして「 Front Spring Stopper Upper (フロントスプリングストッパーアッパー)」を4mmの六角レンチで取り付けます

フロントスプリングストッパーアッパーの取付

 

フロントスプリングストッパーアッパーの調整

Front Spring Stopper Upper(フロントスプリングストッパーアッパー)の真ん中が必ずしもフロントフォークの中心になる必要はありません

スプリングストッパーアッパーの位置

 

それよりも重要な事は、ロックレバーが、レバーから手を離した時にしっかりとサスペンションに引っかかる事と、

スプリングストッパーアッパーの取付注意点-1

ロックレバーを指で押した時にサスペンションが引っかからずにスムーズに外れる事を優先して下さい。

スプリングストッパーアッパーの取付注意点-2

 

だんだん形になってきましたね。

ハンドルの取り付け

ハンドルを31.8Φの物に交換される方は、そのままハンドルステムにハンドルを取り付けます。

BD-1に初めから付いている25.4Φのハンドルを流用されるかたは、「BD-1 Stem Sim」をハンドルに被せてからステムに取り付けます。

ハンドルの取り付け

 

ハンドルは4mmの六角レンチで固定するだけですが、新しいBDー1用ハンドルステムのクランプには狭い方と広い方があります

ステムを横から見た時に、狭い方が上下ピッタリくっつくようにボルトで固定してから広い方のボルトを閉めて行ってください。ボルトの固定力は6~8Nmです。

ハンドルの固定

 

ハンドルが固定できましたら、右側のシフトレバーをハンドルに取り付けます。

シフトレバーの取り付け

 

左右のブレーキレバーをハンドルに取り付けます

ブレーキレバーの取り付け

 

左右のグリップをハンドルに取り付けます

グリップの取り付け

 

フロントフォークの固定

自転車に跨って、ハンドルとタイヤが十字なるようにセットし、フォークボルト2本を5mmの六角レンチで固定して下さい。締め加減は5Nmです。

フォークボルトの固定

 

最後にヘッドにガタツキが無く、ハンドルを左右に動かした時にベアリングがゴリゴリする感じがしないようにヘッドキャップを固定します。

これにて、BD-1のハンドルステム交換は終了です。お疲れ様でした!!

ハンドルステム交換終了